【大家歴27年の大家さん】心優しい店子のトラブル
【大家歴27年の大家さん】心優しい店子のトラブル
私は40歳男性のサービス業従事者です。私の実家は学生街にあり、うちの父親が27年間学生向けアパートを経営していました。経営と云っても家族だけでやっていましたので、私も子供の頃はアパートの掃除や簡単な修理などを手伝っていました。
基本的に学生相手だったこともあり、特に大きなトラブルはありませんでした。学生アパートなので、まれに家賃の滞納があっても保護者が払ってくれましたし、周りにも似たようなアパートがたくさんありましたから、地域住民も学生特有の騒がしさに免疫が出来ていて、年に何回か騒音の苦情が出る程度でした。
比較的落ち着いた中でアパート経営をやっていたのですが、家族にとって忘れられないトラブルがありました。
【今から10年前台湾からの留学生A君】
今から10年ほど前のことです。当時、アパートの全部屋(6部屋しかありませんでしたが)に留学生が住んでいました。建ててから20年ほど経過していて、周りに新しいアパートが増えており、なかなか日本人学生が入居してくれず、空き部屋が目立っていました。
父親は大学の学生課と相談して、身元のしっかりした片言でも日本語が出来る学生に限り斡旋してもらうことになりました。その中に台湾からの留学生A君がいました。彼はアパート第一号の留学生で、両親は試行錯誤してコミュニケーションをとりながら、日本での生活やマナーを教えました。
A君は真面目で責任感があったので、彼の後から入居してきた留学生たちを指導して、アパートの寮長的な役割を果たしてくれました。
【卒業後も就職の紹介したのだが…アルコール中毒】
両親もそんなA君が気に入り、卒業後もこのアパートに住んで日本で働きたいという彼に就職先を紹介しました。卒業後近くのホテルで通訳兼フロント係として働き出したA君でしたが、職場に馴染めず、徐々に酒に溺れていきました。
生活のため最低限の仕事はしていましたが、ほぼアルコール中毒症でした。酔って大騒ぎして、近隣住民とケンカになったり、通学中の小学生に絡んだりと、ひどい時は警察も来ました。私は何度もA君を退去させるべきだと、両親に言いましたが、「うん」とは言いませんでした。
両親はA君と何度も話をしたり、病院に連れて行ったりしましたが、効果はありません。
【急性心筋梗塞で突然亡くなる】
私はもう限界だと思い、退去させる方法を調べ始めた頃、A君がアパートで亡くなりました。急性心筋梗塞だったそうです。その日父親にホテルから2日間無断欠勤しているとの連絡があり、部屋を訪ねると床に倒れていたそうです。
その後台湾からA君の両親とお姉さんがA君を迎えに来日し、後日アパートも引き払いました。それからしばらくして、父親は今住んでいる留学生が居なくなったらアパートを止めることを決心しました。